<ざっくり言うと>
  • 「センター試験の韓国語は在日特権」はデマ
  • 試験名は「外国語」であり「英語」ではないので、英語以外も選択できるのは当然。
  • 英語以外の外国語の学習者数は、高校でも大学でも韓国語はベスト5に入っている。
  • 韓国語の平均点はドイツ語や中国語より低く、平均点が不当に高いというのはデマである。
  • 自信がある者だけが受ける独仏中韓に比べ、猫も杓子も受ける英語の平均点が低いのは当たり前であり、不公平ではない。
  • このデマの理屈だと、英語圏からの帰国子女が英語の試験を受けられるのもおかしいことになる。
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在日特権デマの一つに、「センター試験の韓国語は在日特権」というものがあります。 今回はこのデマを暴きたいと思います。



1.「センター試験を韓国語で受けられる」わけではない


このデマは、「外国語の試験を英語ではなく韓国語で受けられるのは在日特権」というものなのですが、中にはセンター試験自体を韓国語で受けられると勘違いしている人がいます。 「日本の現国問題は難関なのに韓国語の内容は小学生レベルだと担任が怒ってました」と言っていることから、この人が「センター試験を、日本語ではなく韓国語で受けられる」と勘違いしていることは悪実です。


当たり前ですが、現国の代わりに韓国語で受けられるわけではありません。「外国語の試験で、英語ではなく韓国語を選択できる」というだけです。文句を言う前に、最低限の事実ぐらい調べてほしいですね。



2.教科名は「英語」ではなく「外国語」である。


センター試験の韓国語を「在日特権」だという人たちは、「英語以外で受けられるなんておかしい」と言います。しかし、そもそも日本の学校教育で行われている教科は「英語」ではなく「外国語」です。平成28年(2016年)の中央教育審議会答申では、
グローバル化が進展する中、日本の子供たちや若者に多様な外国語を学ぶ機会を提供することは、言語やその背景にある文化の多様性を尊重することにつながるため、英語以外の外国語教育の必要性を更に明確にすることが必要である。
とされており、英語以外の外国語教育も必要であることが記されています。英語以外の外国語でもセンター試験を受けられるのは当然のことと言えます。




3.高校生の韓国語学習者はドイツ語・フランス語より多い


「韓国語は韓国でしか話されていないマイナー言語だから、選択できるのはおかしい」と主張する人もいます。しかし、日本の高校生や大学生にとって、韓国語はマイナー言語ではありません。


まず、センター試験ですので、最も大切なのは高校における英語以外の外国語の学習者数でしょう。平成30年の文科省統計ではこのようになっています。

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韓国語は342の高校で行われ、履修者は11265人。フランス語の201校・6782人や、ドイツ語の96校・2860人をはるかに上回ります。


次に、大学における外国語教育の実施状況を見てみましょう。(平成28年(2016年)

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韓国語は469の大学で行われており、これは全大学の63.7%に及びます。国立大学に絞ってみても、86の国立大学のうち64校で韓国語教育が行われており、全国立大の74.4%です。この数は、英語、中国語、フランス語、ドイツ語に次ぐ数です。


纏めると以下のようになります。

高校での学習者数ランキング

1.英語
2.中国語
3.韓国語
4.フランス語
5.スペイン語
6.ドイツ語

大学での講座設置ランキング

1.英語
2.中国語
3.フランス語
4.ドイツ語
5.韓国語
6.スペイン語


韓国語は、高校での学習者も、大学での講座設置数も、ベスト5に入っています。センター試験が高校生が大学に入るための試験であることを考えれば、外国語で英語・中国語・フランス語・ドイツ語・韓国語の5つが選べるのは当然であると言えましょう。


なお、この状況はセンター試験に韓国語が導入される前から変わりありません。詳しくは、私が以前書いた記事をご参照ください。




4.韓国語より中国語とドイツ語の方が平均点が高い


「センター試験の韓国語は在日特権」という主張で最も多いのが、「韓国語の平均点が高すぎる」というものでしょう。実際の平均点を見てみると、その主張が正しくないことがわかります。直近数年間の外国語の平均点を見てみましょう。(※実際のセンター試験は200点満点だが、100点満点に換算している)

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英語以外の4か国語の平均点はどっこいどっこいで、2014年~2020年の7年間の平均だと、韓国語の71.24点に対し、中国語が74.82点、ドイツ語が73.48点で、韓国語よりも中国語やドイツ語の方が平均点が高いのです。


このことからも、韓国語の平均点が不当に高くて不公平だという主張が間違いであることがわかります。


なお、英語以外の言語を選択する人は、英語よりも点が取れるという自信があるから選択するわけで、猫も杓子も受ける英語よりも平均点が高くなるのは当然です。だから、韓国語のみならず、独仏中韓の4ヵ国語の平均点が全て英語よりも高いわけですね。



5.「帰国子女特権」も主張するのか?


「『外国語』の試験を母語で受けられるなんておかしい」と主張する人もいます。


しかし、この「外国語」というのは、日本にとっての外国語のことであり、受験生にとっての外国語と言う意味ではありません。その理屈であれば、外国語が母語の受験生は、「国語」の試験を日本語ではなく母語で受けていいことになってしまいます。そんなことはおかしいですよね。


それに、もしも韓国語母語話者が外国語の試験で韓国語を選択できることがおかしいというのであれば、アメリカやイギリスなどからの帰国子女はどうなるのでしょうか? 英語が母語の帰国子女が英語で試験を受けることもおかしいですか? 「帰国子女特権だ!」と主張しますか?


大事なことは、日本語と、日本語以外の外国語が理解できるかどうかということです。それを母語として覚えたのか、学習で覚えたのかなど、何の関係もありません。


以上の点から、「センター試験の韓国語が在日特権である」という主張は、ありとあらゆる点で完全に間違っているということができます。「在日特権」とはこのようなデマの集合体に過ぎません。

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